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監督はニック・カサヴェデス

監督は他に『ジョンQ』『わたしの中のあなた』などの作品がある。
上記作品、『きみに読む物語』を含め、病を持つ登場人物がメインとして登場することが多い。
しかしながら、単純に闘病を描くのではなく、社会の制度を絡めていることが多い。

この作品は、認知症を患った女性と平凡な男性の物語である。

▼演技 17

脇役が光る作品である。
もちろん、脇役が光ることができるのも主人公、ヒロインの二人がしっかりと演じているからである。

まず、主人公の父、フランク演じるサム・シェパード

主人公のノアはアリーと出会ってから突飛な行動ばかりしていて、
人によっては怖さを感じるかもしれない。
しかし、父と詩を朗読するシーンによって、
その壁を崩すことができる。
父とのあたたかいやりとりや、
ノアが初めてみせる恥じらいの感情が実に上手く表現されている。
なんの変哲もないシーンであるが、
観客が主人公に共感を抱く点で非常に重要な役割を果たしている。

小難しいことはどうでもいいが、
この映画において一番微笑ましいシーンなのでゆったりとみて欲しい。
父と息子と恋人の会話の内容もユーモアに富んでいて素晴らしい。

また、ヒロインの母、アンを演じるジョアン・アレン

典型的な上流階級の母親であるが、
後半、娘のアリーに昔の話をするシーンがよい。
最終的に、アリーが大きな選択をするのであるが、
その決断に期待することができる。
一体どうするのか、観客を迷わすことになると思う。

ただ、このシーンもまた特に難しいことは考えず
母親の娘に対する愛を感じればよいと思う。

▼ストーリー 14

この作品は小説のような始まり方をしている。

ある療養施設で、
男性の老人が登場し、ナレーションが始まる

『私はどこにでもいる平凡な男だ
〜省略〜
でも一つだけ、誰にも負けなかったことがある』

原作の小説を読んでいないのでそのまま引用したのかわからないが、
形式的な始まりではあるものの期待感が膨らみ、引かれてしまう。
そして、続く言葉。

『命がけで ある人を愛した
私にはそれだけで十分だ』

冒頭で全てを語ってしまうという手法を取る。
そして、その老人は年を召した女性に物語を読み始める。

この話は少し突飛なエピソードがあるものの
一昔前の時代設定の恋物語の定番の話である。
いくらでも同様の作品を挙げることができる。

しかし、他の作品よりも光る部分がある。
それはストーリーではなく、まなざしだと思う。

▼映像 15

視線ではなく、まなざし。
ただ何かものや人に意識を向けるのではなく、
思いをこらしてみる、ということである。

主人公のノアが遊園地で最初にアリーをみるときのまなざしがこの映画の全てである。

冒頭のわずか数秒のシーンであるが、
この映画における最も重要なシーンである。

このシーンで何を感じるかによって、
作品の善し悪しが大きく分かれると思う。

また、老人が読み聞かせるという物語であるが、
言葉で語るのではなく、表情を用いた映像で語るシーンが全体的に多く、
優れていると思った。

▼印象値 27

丁寧に作られた作品で、始めから終わりまで
ゆったりと身を委ねられる映画である。

人によっては退屈かもしれないけれど、
わかっていても形式を守るということには一種の美しさがある。

◆総合 72

一歩間違えるとただのメロドラマになってしまうような作品だが、
映像として素晴らしいものになっている。

夢を見るための映画だと思うが、
こういう映画もあっていいと思う。